考え方

あるの視点から

相続税、贈与税

はじめに

相続税が課税されるのは、亡くなった方の約1割に過ぎません。したがって、このブログが役立つのはその1割の方々に限られますが、税制全体の動向については、他の方々も知っておく価値があります。

以下に、相続税の対象者率を示すグラフを掲載しています。2015年に急増しているのは、相続税に関する改正が行われたためです。昨年度も改正が行われ、暦年贈与が実質的に難しくなっています。これらのポイントをまとめていきたいと思います。

暦年贈与とは|定期贈与とならないための6つの注意点|freee税理士検索 (advisors-freee.jp)

【暦年贈与】やり方と注意点は?贈与税の計算方法も解説! (chester-souzoku.com)

贈与税 - Wikipedia

相続税 - Wikipedia

 

15年の相続税改正

22015年に相続税の対象者が増加するような改正が行われました。それまで相続税が非課税となる条件は「5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人数」以下の資産を持つ場合でしたが、改正により基礎控除額が「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数」に引き下げられました。これにより、特に東京に家を持つ多くの方々が相続税の対象となる可能性が高まりました。そこで、小規模宅地の特例を拡大し、こうした状況に対応できるようにしました。この改正を表にまとめました。

項目 改正前 改正後
基礎控除 5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人数 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数
税率の改正 最高税率が50% 最高税率が55%
税率構造の見直し 6段階(10,15,20,30,40,50%) 8段階(10,15,20,30,40,45,50,55%)
小規模宅地等の特例 240㎡までの宅地の80%が評価減 330㎡までの宅地の80%が評価減
相続時精算課税制度 贈与者が65歳以上の親、受贈者が20歳以上の子または孫で利用可能 贈与者の年齢を60歳以上に緩和
直系尊属からの贈与の特例 教育資金の一括贈与が非課税 結婚・子育て資金の一括贈与も非課税対象に追加
これらの改正により、相続税の負担が増加したケースが多くなりましたが、同時に特例措置の拡充も行われました。

23年度の相続税改正

23年度の相続税改正では、相続税贈与税の制度に大きな変化がありました。特に、相続時精算課税制度の利用がより便利になった点が注目されています。

主な改正点

  • 相続時精算課税制度の基礎控除新設:

    • 2024年1月1日以降の贈与から、相続時精算課税制度を選択している場合、年間110万円までは贈与税相続税もかかりません。
    • これにより、小額の贈与を頻繁に行う場合の手続きが簡素化されました。
  • 生前贈与加算の対象期間延長:

    • 相続開始前7年以内の贈与が、相続税の計算に組み込まれるようになりました。
    • これまで3年だった期間が延長されたため、贈与のタイミングを検討する際の注意点が増えました。

これらの改正が意味すること

  • 相続税贈与税の負担軽減:

    • 小額の贈与については、贈与税の申告が不要になり、相続税の負担も軽減されます。
    • 生前贈与の計画を立てる際に、より柔軟な対応が可能になりました。
  • 制度の利用促進:

    • 相続時精算課税制度の利用が促進され、相続対策の選択肢が広がりました。

具体的に

  • 例1:孫への教育資金の贈与

    • 毎年110万円ずつ孫に教育資金を贈与する場合、贈与税の申告は不要になり、相続税の負担も軽減されます。
  • 例2:老後の資金の準備

    • 子供に少しずつ財産を移転していく場合、生前贈与加算の対象期間が7年になったことを考慮して、贈与のタイミングを検討する必要があります。

No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁 (nta.go.jp)

No.4155 相続税の税率|国税庁 (nta.go.jp)

No.4158 配偶者の税額の軽減|国税庁 (nta.go.jp)

まとめ

2023年度の相続税改正は、相続や贈与に関する制度をより身近なものにしました。しかし、相続額を減少させるために、ほとんどの富裕層が行っていた暦年贈与は実質やれなくなりました。バブル経済までは、土地を暦年贈与する事で、結果として、大きな節税効果が見込まれていました。近年は、地価が利用価値により評価されるようになってきています。



相続税贈与税の税額計算の表を参考までにつけました。

相続税の税率と控除額
課税財産 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
     
<一般贈与の場合の税率>
基礎控除 税率 控除額
200万円以下 10% -
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超え 55% 400万円
<特例贈与の場合の税率>
基礎控除 税率 控除額
200万円以下 10% -
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超え 55% 640万円