パラダイム

あるパラダイムを意識する

民族主義と脳内物質

                  はじめに

民族主義とは、特定の民族が共通の文化、歴史、言語、血統などによって結びついているという意識に基づき、その統一や発展を目指す考え方です。しかし、民族の定義は明確に定まっておらず、時代や地域によって異なります。また、国家や政治体制によって利用されることも多く、時にはヘイトスピーチやジェノサイドといった悲劇を引き起こす要因となることもあります。

このブログでは世界の民族主義を概観し、なぜ支持を集めるのかを考察します。

              世界の民族主義

世界の民族主義を概観しましょう。

  1. ヨーロッパ

  2. アジア

  3. 中東・アフリカ

  4. アメリカ大陸

                                              宗教と民族主義

民族主義と宗教はしばしば結びつき、強力なアイデンティティの形成要因となります。多くの民族は宗教を基盤として共同体を形成し、歴史的に民族の結束を促してきました。しかし、民族主義が宗教と結びつくことで、他宗教との対立が生じることも少なくありません。

  1. ヨーロッパの宗教的民族主義

  2. 中東の宗教的民族主義

  3. アジアの宗教的民族主義

              キリスト教

キリスト教の宗派はカソリックプロテスタントだけではありません。

キリスト教諸教派の一覧 - Wikipedia

ヨーロッパではキリスト教が、各地の土着の宗教や習慣を取り込みながら発展しました。これは布教を円滑に進めるための戦略でもあり、また地域社会に根付くための適応の過程でもありました。「ハリーポッター」など非キリスト教的な文学作品がヨーロッパには多くあります。

  • クリスマス(12月25日)
    もともとローマ帝国では、冬至の時期に「ミトラ教」や「ソル・インウィクトゥス(不敗の太陽)」の祭りが行われていました。キリストの誕生日としてこの日が選ばれたのは、これらの太陽信仰と結びつけることで、異教徒に受け入れられやすくするためだったと考えられています。

    ミトラ教 - Wikipedia

  • イースター(復活祭)
    イースターという名称は、ゲルマンの春の女神「エオストレ(Eostre)」に由来するとされます。また、卵やウサギは元々ゲルマン・ケルトの春の豊穣を祝うシンボルでした。

    復活祭 - Wikipedia

  • 聖ブリギッド(St. Brigid)
    アイルランドの聖女ブリギッドは、もともとケルトの女神ブリギッド(Brigid)と習合したものと考えられています。

    キルデアのブリギッド - Wikipedia

  • 聖ニコラウス(St. Nicholas)
    サンタクロースのモデルとなった聖ニコラウスは、北欧やゲルマンの豊穣の神「オーディン」と重ね合わされたと言われています。

    ミラのニコラオス - Wikipedia

  • 異教の神殿や祭壇が、後に教会や修道院に転用されることもありました。たとえば、ローマのパンテオン神殿は7世紀にキリスト教の教会(サンタ・マリア・アド・マルティレス)へと変えられました。
  • 聖水・護符・祭壇の装飾
    ローマやゲルマン、ケルトの文化には「魔除け」や「聖なる水」を使う習慣があり、これがキリスト教の「聖水」「聖遺物崇敬」「巡礼」などの習慣に繋がったと考えられます。
  • クリスマスツリー
    ゲルマンやケルトの伝統では、冬至に常緑樹を飾る習慣がありました。これがクリスマスツリーのルーツの一つとされています。

                                  民族主義の持つ二面性

民族主義は、多くの人にとってアイデンティティの基盤となり、誇りや連帯感を生み出します。しかし、それが過度に強調されると、他民族への敵意を生み出し、社会を分断する要因となります。歴史を振り返ると、ナショナリズムが戦争や差別の温床となった例は数多く見られます。

民族 - Wikipedia

民族主義 - Wikipedia

                                  脳内物質と民族主義

多くの人は、褒められれば自然と気分が良くなります。だからこそ、社交の場ではお世辞が飛び交います。訪問先の国で「素晴らしい国ですね」「この料理はとても美味しいです」と言うのは、ある種の礼儀作法。訪日外国人が似たような言葉を口にしても、不思議ではありません。普通は、それをそのまま鵜呑みにする人はいないでしょう。

しかし、民族主義の心理を掘り下げると、こうした言葉の裏に、もう少し“脳内の事情”が見えてきます。人は自分のルーツや先祖を肯定的に語るとき、ドーパミンやエンドルフィンといった快感物質が分泌され、心地よさを感じます。いわば、生物として備わった“自家製ボーナス”のようなものです。

また、人間は集団に属することで安心を得てきた生き物です。「自分の所属集団は優れている」「誇れる歴史を持っている」と思えるほど、自己肯定感が高まり、その感情自体がまた快感につながります。種として生き延びるための仕組みが、こんな形でも働いているわけです。

元々は、食べ物を得たとき、生殖や子育てを行ったときなど、生存に直結する行動に対して神経伝達物質が分泌され、それが報酬として働いていました。しかしホモ・サピエンスは、他者との同調や物語への共感といった、生存に“直接関係しない”ものにも快感が出るようになり、それが社会を発展させる力にもなりました。

そして――思えば、この仕組みが「依存症」という現象を生む土台にもなっていきます。
では、いったいそれが始まったのはいつなのか。
人類が「快感のスイッチ」を多方面で押せるようになった、その瞬間こそが、その始まりだったのかもしれません。

三大神経伝達物質:セロトニンとドーパミンとノルアドレナリン

脳内物質を知ろう:心と体に影響を与える化学物質の秘密 | リドミー

報酬系とはなにか?私達を動かす脳の仕組み

報酬系の脳科学:なぜ私達は欲望するのか? - Lab BRAINS

アルコールやギャブルと同じように民族主義も依存症を引き起こしやすい。



                         さいごに

民族主義には、人々の結束を強めたり、文化を保存したりするという肯定的な側面があります。しかし、排他性を伴うと負の側面が顕著になりがちです。特に、脳内麻薬が民族主義を助長しやすいことを自覚することが重要です。無自覚に民族主義を推進すれば、世界の分断を加速させることにつながりかねません。  

現代社会ではインターネットによってあらゆるものがつながる一方で、表情やジェスチャーといった非言語的な情報が欠如しがちな匿名社会となっています。そのため、孤独やストレス過多に陥り易く、そこから逃れようと民族主義に傾倒しやすい環境と言えます。過度な排他主義に陥ることなく、バランスを取ることが求められます。  

自分の民族を誇りに思うこと自体は問題ではありませんが、それが他者を貶める形にならないよう意識することが大切です。民族主義と脳内物質の関係を理解することで、感情に流されることなく、より冷静に民族問題と向き合うことができるのではないでしょうか。