パラダイム

あるパラダイムを意識する

「生」と「膜」

            はじめに

私たち生物は、常に変化する世界の中で、非常に安定した内部環境(恒常性)を保ち続けています。これは、熱力学第二法則――宇宙全体のエントロピー(無秩序さ)は増大する――という自然の強い流れに、局所的に逆らう行為です。

この驚異的な「秩序の維持」を可能にしているのは、まさに私たちが「膜(と呼ぶ薄い境界線にあります。

      膜の役割 (1):区画化と自己保存

生命体が誕生し、進化していく上で、最も重要だったのが「(Compartmentalization)」です。

  • 境界の確立: 細胞膜は、細胞の内部と外部を明確に分け、生命活動に必要な特定の     イオン濃度、$\text{pH}$、そして数多くの分子を閉じ込めます。これにより、外部環境の激しい変動から内部を守り、**生命独自の「環境」**を確立します。

  • 選択的透過性: 膜は単なる壁ではありません。無秩序に物質が出入りするのを防ぎながらも、特定のトランスポーターチャネル(膜タンパク質)を使って、必要な栄養素だけを能動的に取り込み、老廃物を排出します。これは、生命体が**「自己」を維持し、外部とインテリジェントにやり取りするための最初の定義**となります。

       膜の役割 (2):エネルギーとエントロピーの制御

生物が秩序を維持するためには、外部からエントロピーのエネルギーを取り込み、活動の結果生じた過剰なエントロピー(無秩序さ)を系外に排出する必要があります。膜は、この熱力学的バランスの主戦場です。

1. 多重膜による専門化

真核細胞には、細胞膜だけでなく、核、小胞体、ミトコンドリア葉緑体といった膜に囲まれた細胞内小器官(オルガネラ)が存在します。この多重構造が、生命活動を効率化しています。

2. 膜上のエネルギー変換

特に、ミトコンドリアの内膜や葉緑体のチラコイド膜は、$\text{ATP}$(アデノシン三リン酸:生命のエネルギー通貨)を合成する巨大な発電所です。

  • 膜に埋め込まれたタンパク質が、電子伝達のエネルギーを利用して**水素イオン(プロトン$\text{H}^+$)**を膜の片側に汲み出します。

  • これにより、膜を挟んで高い濃度勾配という「秩序立った」状態が生まれます。

  • この勾配が解消される力を使って、$\text{ATP}$合成酵素が$\text{ATP}$を生み出すのです。

この一連の代謝プロセスは、全体としてという形でエントロピーを宇宙に排出しながら、細胞内では**高エネルギーな$\text{ATP}$という「秩序」**を生み出しているのです。

       膜と遺伝子:設計図と活動の場

ウイルスは、「膜」によって区画化された宿主細胞=「生きた環境」なしでは、自己複製という生命活動を開始できない、極めて特殊な存在です。

この事実は、「生の本質は膜にある」という考えを、補強する強力な証拠とも言えます。

ウイルスが「膜」に依存する理由

ウイルスは、その構造が極めてシンプルであるため、生命が持つべき機能の大部分を自前で持っていません。

1. エネルギー代謝の欠如

生命活動の根幹である(エネルギー通貨)を作り出すための、ミトコンドリアのような膜構造や、そこに存在する酵素群をウイルスは持ちません。

ウイルスは、増殖に必要なエネルギーを、宿主細胞の膜が維持している代謝システムから盗み取る(利用する)必要があります。

2.タンパク質合成システムの欠如

ウイルスは、自身の設計図を持っているにもかかわらず、その設計図を読み込んでタンパク質を合成するリボソームや、合成に必要なRNAなどの翻訳機構を持っていません。

 ウイルスの遺伝物質は、侵入後、宿主細胞の膜に囲まれた細胞質に入り込み、宿主のリボソームを乗っ取って、自分のタンパク質を大量生産させます。

3. 「自己」と「非自己」の境界の脆弱性

ウイルスがエンベロープ(脂質二重膜)を持っている場合もありますが、これは自身で合成したものではなく、宿主細胞から出芽する際にもぎ取った膜の一部です。そのため、ウイルス自体には、恒常性を能動的に維持する膜機能はありません。

 

         「膜」が「生」の定義を強化する

ウイルスを「自己複製する化学物質」と定義すると、生物学的な「生」を定義づける上で、膜の存在と機能がいかに重要であるかが明確になります。

  ウイルスの状況 膜を持つ細胞の状況
区画化 遺伝物質をカプシド(タンパク質の殻)で包んでいるのみ。 脂質二重膜で内部と外部を明確に分け、内部環境を安定化(恒常性)。
エネルギー代謝 無し。宿主依存。 膜上で能動的にエネルギー(ATP)を生成し、消費。
自己複製 宿主細胞のシステム(リボソーム酵素など)を利用して初めて可能。 自身で全ての分子合成機構を持ち、自己完結的に複製可能。

つまり、「生」は、単なる情報の複製ではなく、「膜によって周囲と隔絶され、内部環境の秩序を自力で維持し、エネルギーを代謝しながら情報を複製するシステム」である、と再確認できるわけです。

この視点から、新型コロナウイルスが細胞に侵入するプロセスを、見てみるのはいかがでしょうか?

        さいごに

細胞の「設計図」である遺伝子は、この素晴らしい膜システムを構築するための情報を提供しています。

  • 遺伝子は、膜を構築する脂質や、膜に埋め込まれ機能する無数のタンパク質(ポンプ、チャネル、受容体など)の設計図です。

究極的に言えば、「生」とは、「遺伝子という情報」と「膜という活動の場」が揃って初めて維持される、熱力学的に極めて特異な、自己組織化されたシステムだと言えるでしょう。

私たちは日々の生活で、この生命の境界線である膜の恩恵を受けているのです。

投資家必見の情報サイト

        はじめに

ここでは実用的なお話をします。

株式投資で安定して利益を残すには、市場全体の動向を読む“マクロ視点”と、企業の実力を見極める“ミクロ視点”の両方が不可欠です。ここでは、デイトレでも長期投資でも役立つ「取引前のチェックリスト」と「銘柄選定で必ず見るべき指標」をまとめて解説します。

       主要経済指標

市場を動かすデータ一覧

指標 分野 性質 重要度 概要
米ISM製造業景況指数 景気 先行指数 ★★★ 製造業の受注・雇用など景況感。先行性が高い。
米ISM非製造業景況指数 景気 先行指数 ★★★ サービス業中心。米経済の大部分を占める。
米小売売上高 消費 一致指数 ★★★ 百貨店やスーパーの売上動向。消費の勢いを反映。
米雇用統計 雇用 遅行指数 ★★★ 非農業部門雇用者数など。市場最大級の注目度。
フェデラルファンド金利 金融 金融 ★★★ FRBが誘導する政策金利。世界の相場を左右。
米2年債利回り 金融 金融 ★★★ 金融政策の先行きを反映しやすい。
米住宅着工件数 住宅 先行指数 ★★ 景気の初動に反応しやすい住宅指標。
失業保険新規申請件数 雇用 先行指数 ★★ 週次で雇用の変化を素早く捉える。
消費者物価指数(CPI) 物価 遅行指数 ★★ インフレ動向を示す。金融政策の判断材料。

        取引所が開く前に

① 前日の米国市場(NYダウ/ナスダック)

日本株の寄り付きに最も影響するのが米国株です。アメリカでは日本時間の 23時30分~翌日の6時00分   ニューヨーク証券取引所で、取引が行われています。ただし、3月の第2日曜日~11月の第1日曜日までは サマータイムとして 22:30 - 05:00になります。
アメリカのを動向をnyダウ・Nasdaq・S&P500の終値でチェックします。

指数 特徴 日本株への影響
NYダウ 優良30銘柄。市場全体のムードを反映。 市場心理に影響。
ナスダック IT・半導体中心。 日本のハイテク株に直結。

ポイント
ナスダックが大幅上昇の日は、日本のハイテク関連も買われやすい。
(ハイテク株はナスダックに運命共同体の誓いでも立てているのか、というほど連動します。)

② 早朝のドル円レート

為替は日本株、とくに輸出企業に直撃します。

為替の動き 輸出企業 外国人投資家 日本株
円安/ドル高 利益が増える 日本株が「割安」に見える プラス要因
円高/ドル安 利益が減る 日本株が「割高」に見える マイナス要因

③ その日の経済指標スケジュール

午前中の重要指標(鉱工業生産、日銀短観など)は相場を動かすため、発表時間の把握は必須です。また、米10年債利回りもチェックします。
金利急騰 → ハイテク株が下落しやすい/金融株は強くなる傾向があります。

(相場は金利に弱い…恋愛での“温度差”くらい効きます。)

   個別銘柄の為の指標

市場全体が良くても、最終的な利益は銘柄選びで決まります。まず押さえるべきは PER と PBR の2つです。


PER(株価収益率)― 利益から見た割安性

PER = 株価 ÷ 1株あたり純利益(EPS)

  • 数値が低いほど割安(一般に15倍以下は低め)

  • 過去平均、業界平均と比較して評価する

読み方のポイント

  • 株価上昇 → PER上昇

  • 純利益増 → PER低下(割安化)

  • ITや成長株はPERが高くなりやすい(100倍も珍しくない)

※PERだけで「割安だ!」と飛びつかないこと。
 「安物買いの値下がり株」という悲劇は避けたいところです。

PBR(株価純資産倍率)― 資産から見た割安性

PBR = 株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS

1以下は資産を処分した価格と株価総額が同じという事で、企業価値はゼロとなります。

  • 1倍以下は“解散価値割れ”で割安とされます。

  • 東証も近年「PBR1倍割れ企業は株主価値を高めよ」と要請中です・

PBRの注意点

低いから「宝の山」というわけではなく、本当に割安なのか、それとも“割安に見えるだけの会社”なのかは要確認。(PBRが0.3倍でも、「理由が0.3倍」ということはよくあります。)

 

        企業の実力指標

1. ROE自己資本利益率)― 株主のお金でどれだけ稼げるか

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本

  • 高いほど「同じ資本で効率よく稼いでいる」企業

  • 一般に 10%以上で優秀、8%前後で合格ライン

ROEが重要視される理由

ROEを見ると、その企業が“株主のお金をどれだけうまく増やせているか”がわかります。

※薄利多売でROEが低い企業より、少数精鋭で高い利益率を持つ企業の方が株価は伸びやすい傾向があります。

2. ROA総資産利益率)― 会社全体の資産を使ううまさ

ROA = 当期純利益 ÷ 総資産

  • 資産をどれだけ効率的に利益へ変換しているかを見る指標

  • 大型企業・インフラ系は低めになりがちで、業種により違うので、業界内比較が有効

          ROEとREA

借入を増やして事業を拡大すると、多くの場合ROA下がりやすくなります。

それは ROA の式

ROA = 利益 ÷ 総資産

借入を増やすと
→ 総資産が増える(=分母が大きくなる)
→ 利益が同じなら ROAは下がる

  • ROE:株主資本が対象

  • ROA:会社が持つ全部の資産が対象

会社が”ムダな資産だらけ”かどうかも分かるため、ROEとセットで見ると、企業の本当の効率が浮き上がります。

       キャッシュフロー(CF)

利益が出ていても、現金が増えていなければ意味がありません。

営業CFは 本業でキャッシュを生み出す力 を示します。

チェックポイント

  • 営業CFが「プラス → プラス → プラス」と継続しているか

  • 利益より営業CFが大きい企業は“強い”

  • 営業CFがマイナス続きの企業は危険(会計上の利益だけが立っているパターン)

(会計上の利益だけで投資すると、“実体のない黒字”に泣かされます。)

      自己資本比率

倒産しにくさの指標です。

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100

  • 40%以上:安心感がある

  • 20〜40%:一般的

  • 20%未満:財務的に少し心配

借金頼みの会社は、景気後退や金利上昇に弱くなります。設立時はやむ得ませんが、設立から10年以上経っても借り入れが多いのは考え物です。ただし。長期に亘り攻め続けている成功例もあります。

        成長性を見る指標

1. 売上高の成長率

  • 毎年売上が伸びている企業は、市場が拡大しているか、競争に勝っている企業

  • 3〜5年のトレンドが重要

(売上が安定して右肩上がりの企業は、チャートも右肩上がりになりやすい…株の世界の“重力の法則”みたいなものです。)

2. 営業利益率

営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高

  • 10%以上:高収益企業

  • 業界比較が超重要
     (例)飲食は低め、ITは高め、インフラは安定だが低め

営業利益率は、「その業界で戦う才能」みたいなものです。

以下に各銘柄の株価指標を表にまとめました。

株式パフォーマンス指標
指標 意味 計算 / 鑑定方法 見方 注意点
株価 企業への期待・需給を反映した価格 市場の売買で決定 上昇=期待、下降=懸念 単体で見ても意味が薄い。過去株価との比較が重要
PER
株価収益率
利益に対する株価の割安/割高度 株価 ÷ EPS 低い=割安、高い=期待先行 業種ごとに基準が違う。赤字企業では意味なし
PBR
株価純資産倍率
資産に対する株価の割安/割高度 株価 ÷ BPS 1倍未満=割安とされることが多い 資産の質が悪い会社は低くても危険
ROE
自己資本利益率
出資者のお金でどれだけ稼いでいるか 当期純利益 ÷ 自己資本 高いほど効率的 高すぎる場合、負債で無理にレバレッジしている可能性
ROA総資産利益率 総資産(会社全体)を使う効率 当期純利益 ÷ 総資産 高い=資産を有効活用 借入が多い企業はROEに比べROAは低くなる
EPS
1株利益
株主1株あたりの利益 純利益 ÷ 発行株式数 高いほど良い 自社株買いで人工的に上がることがある
BPS
1株純資産
株主1株あたりの資産 純資産 ÷ 発行株式数 安定性の目安 将来利益を反映しないため成長株では弱い
配当利回 株価に対する配当の割合 年間配当 ÷ 株価 高い=収益性良い 極端に高い銘柄は無理している可能性あり(罠)
配当性向 利益のうち配当に回す比率 配当総額 ÷ 当期純利益 適正は30–50%程度 高すぎると将来投資できず成長力が落ちる
βベータ値 市場全体との連動度 統計的に算出 1超=値動き大きめ、1未満=安定 未来の値動きを保証しない
出来高 取引の活発さ 売買株数 多い=注目度高い 仕手株の異常出来高は危険信号
時価総額 企業規模を示す値 株価 × 発行株式数 大=安定、小=成長余地 株価だけでは判断できない
自己資本比率 財務健全性 自己資本 ÷ 総資産 高い=倒産しにくい 低すぎると借金依存で危険
営業利益率 本業の収益性 営業利益 ÷ 売上高 高いほど本業が強い 特殊要因で変動することあり
キャッシュフロー
CF
現金の余裕 営業CF – 投資CF プラス=健全 一時的な投資でマイナスもあり得る

         チャート

銘柄を選ぶとき、ファンダメンタル(企業の中身)と並んで重要なのがチャートです。
以下は、初心者でも一瞬で判断できるシンプル・チェック。

① 上昇トレンドか?(右肩上がり)

  • 200日移動平均線が右肩上がり

  • 株価がその上に位置している

これだけで勝率は大幅に上がります。
逆に、右肩下がりの銘柄は“逆風の坂道ダッシュ”状態。

出来高が増えているか?

  • 出来高増 → 投資家が注目しているサイン

  • 株価上昇+出来高増 → 本物の上昇トレンド

出来高ゼロの銘柄は、会議室で誰も発言しないようなもの…静かすぎて不安です。)

時価総額は適正か?

  • 小型株:上がりやすいが下がりやすい

  • 大型株:堅実だが大きなジャンプはしにくい

投資スタイルに合わせて選ぶのがポイント。

      総合判断のすすめ

良い銘柄は
PER、PBR、ROE、営業CF、チャート
など複数の項目が“そこそこ以上”で揃っています。

逆に、1つだけ突出して良くても他がボロボロなら注意が必要です。

株選びは料理と同じで、「塩だけが極上」でも美味しくはならないのです。

株価は、その値段である理由があります。理由を探りましょう。

 

   実践編:銘柄を選ぶための最短ルート

以下は、プロ投資家も使う 王道のチェック手順 を、ムダなく最適化したものです。

① まず、チャートで“ふるいにかける”

いきなり決算書に飛びつくより、チャートで候補を半分まで絞るほうが効率的 です。

最初に落とすべき銘柄

次のどれかに当てはまったら即パス。

  • 200日線が右肩下がり

  • 出来高が極端に少ない

  • 急騰→急落を繰り返す不安定銘柄

  • 長期的にボックス(横ばい)で動きが乏しい

これは投資の“地雷除去”です。
地雷原に踏み込んでから考えるより、避ける方がいいと思います。

時価総額で方向性を決める

投資スタイルに合わせて選択。

投資スタイル 向いている時価総額
安定重視・堅実 大型株(1兆円〜)
ほどほど成長 中型株(1000億〜1兆円)
成長狙い 小型株(〜1000億)

小型株はテン bagger(10倍)候補もいますが、動きが激しすぎるので体力が必要です。

③ 業界を決める

株は「良い企業」より“追い風の業界”の企業を選ぶ方が勝率が高い。

たとえば…

  • 半導体 → 世界的に設備投資が拡大

  • 旅行・レジャー → 円安メリット

  • 銀行 → 金利上昇局面の追い風

  • 建設 → 政府の補助金で需要増

  • AI・クラウド → 世界的な成長産業

風向きが良い業界に乗るのは、マラソンで自転車に掴まるぐらい楽になります(もちろんルール違反ですが気持ちはそんな感じです)。

④ 個別企業の“中身”を見る

ここから、選んだ銘柄が 本当に強い会社か を判断します。

1. 成長性(売上・利益)

  • 売上高が3〜5年連続で伸びているか

  • 営業利益率が高い or 上昇基調

※業績が右肩上がりなら、株価も時間をかけて右肩上がります。

2. 収益性(ROEROA

  • ROE 10〜15%以上:理想

  • 業界平均より高ければ合格

数字の高さ=経営センスの高さです。

3. 割安性(PER・PBR)

  • PER:業界平均と比較

  • PBR:1倍割れは割安の可能性

ただし、理由が“期待されていない”だけなら危険。
「低PBRのまま不人気」が続く銘柄もあります。

4. 財務の健全性

無理な拡大をすると、好景気で元気でも不景気で倒れます。

5. 営業キャッシュフロー(営業CF)

  • 継続的にプラスか

  • 利益より営業CFが大きいと優良企業の可能性

現金は嘘をつきません。利益が化粧されていても、キャッシュフローはごまかせません。

⑤ 最後にチャートでタイミングを判断

ここまでで「買うべき企業」は見えます。
あとは、“いつ買うか”の問題

最低限の基準は以下。

▼ 良いエントリータイミング

  • 25日線を上抜けしてきた

  • 出来高が増えている

  • 押し目(短期調整)で下げ止まったところ

  • 直近の高値をブレイク

逆に、上げきった後の「高値掴み」は避けましょう。

        まとめ

ここ3年は時々調整はしますが、右肩上がりです。現在は5万円です。誰でも株式で、利益が出ています。株式投資を5年程度の人の話は異常値を基にしてるかも知れません。

バブル景気ではほとんど全ての人が「まだ上がる」「ちょっと大きい調整をしているだけだ」と思い、非常に大きい損失をこうむりました。異常な年である1889年直前の1988年はほぼ3万円でした。年2%づつ上がるとして、複利計算をすると35年間で倍です。こう見ると現在の株価が異常に高いとは見ません。さて、どうなるのでしょう。

大きく上げれば大きく下がり株価は調整して行きます。「まだ」は「もう」なり「もう」は「まだ」なり、その時期は誰にも解りません。分かればだれでもビリオネラです。

最近の日本株高はインフレ=物価上昇によるところが大きいですが、35年間近く続いた低成長で、株価が上がっていなかったこともあると思いますが、予想(架空)です。だから市場であり、株式投資の面白さです。

  1. チャートが右肩上がりか確認

  2. 時価総額で投資スタイルに合うか判断

  3. 追い風の業界を選ぶ

  4. 売上・利益の成長をチェック

  5. ROEROAで収益性を確認

  6. PER・PBRで割安性を比較

  7. 営業CF・財務状況をチェック

  8. チャートでエントリータイミングを決定

この流れで選んだ銘柄は、「勝ちやすい銘柄」になるだろうと期待しています。

伸びるであろう企業は読めますが、株価は高くなっています。相場が読めれば誰でも億万長者になれます。倒産する企業もありますが、そこそこの規模であれば、徐々には成長します。なので、長期には株価は少しだけ右肩上がりですし、配当もあります。ここ3年の日本株はインフレ率が高い事もあり、異常に上昇しましたが、これからも長期には上昇傾向であることを信じて株式投資を行っています。公表されている指標の見方をこのブログで纏めてみました。少し下もお役に立てたら幸いです。

 

経済指標 一般的な関係
ドル円 (円安) 日本株⤴ 大抵は
NYダウ 日本株⤴ やすい
米国金利 ドル円 NYダウ 

 

株式情報サイト:私が見ている株式情報サイトです。先物は多くのことを織り込んでいると思い、取引所が開く前にいつも参照しています。このサイトにはアメリカ始め海外の取引所状況・為替相場コモディティ国債金利なども見ることが出来るので重宝しています。

fiscoは登録する事が必要ですが、スクリーニングが出来ます、制限はありますが無料会員登録もあり、私も無料会員です、Yahooファイナンスは多分一番メジャーだと思います。

私はSBI証券で口座開設をしていて、日経先物サイトとSBI証券の開設者向けのサイトがほとんどです。 

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第2次世界大戦と「特権階級」

       はじめに

一般論として、第二次世界大戦期の財閥、豪商、豪農といった富裕層や特権階級の死亡率(戦死率を含む)は、平均(一般国民や兵士)よりも低かった可能性が高いと考えられています。

このことに関する確実な統計データを見つけるのは困難ですが、当時の日本の社会構造と徴兵制度、戦況から、以下の要因が推測されます。

    階層別の要因と死亡率の差

財閥・豪商(都市部の富裕層)

  • 徴兵の回避・優遇:
    • 軍需産業に関わる技術者、幹部など、戦争遂行に不可欠とされる職種の者には、徴兵猶予免除が適用されるケースが多くありました。

    • 富裕層の子弟は、大学や専門学校に進学し、学徒動員される場合でも、非戦闘職種や国内での研究職などに配置される傾向が、一般の徴集兵よりも高かったとされます。

  • 空襲からの保護:

    • 多くの富裕層は、都市郊外に別邸を持っていました。都市の中心部は空襲被害で焼けましたが、別邸に疎開していた人も多く、彼らの多くは生き残りました。これらの別邸が多く存在する地域は現在、高級住宅地となっており、一区画あたり千平方メートル(約300坪)以上の敷地を持つ邸宅が並んでいます。これは、一般的な個別住宅の敷地面積の中央値(約250㎡)の4倍にあたります。

2. 豪農(大地主)

  • 徴兵の回避・優遇:

    • 農業者は経営の維持を理由に徴兵が猶予される場合がありました。

    • また、地方の名望家として軍や行政との人的な繋がりを利用して、比較的安全な配置についてもらったり、兵役を回避したりできたケースもありました。

    • 豪農は田舎の富裕層で、子弟は多くが大学や専門学校に進学しました。学徒動員される場合でも、非戦闘職種や国内での研究職などに配置される傾向が、高かったとされます。
  • 戦死率の低さ:

    • 一般の小作農や次男以下の農家の子弟は、比較的容易に徴兵され、最前線の歩兵として戦地に送られることが多く、高い戦死率に晒されました。税法の関係もあり、豪農層は戦死率が低かったと推測されます。

       20世紀初頭貧富

20世紀初頭の日本は、貧富の差が非常に大きい社会でした。

この時期は産業化が急速に進んだ結果、一握りの富裕層が国民所得の大部分を独占する状況が見られ、欧米の先進工業国と同程度の高い水準の格差が存在していました。

1. 所得の集中

  • 富裕層への所得集中: 第一次世界大戦を経て、富裕層への所得の集中が顕著に進みました。

  • 上位層の占有率: 戦間期1920年代〜1930年代前半)には、上位1%の所得シェアが最大で20%にも達し、これは同時期のアメリカを上回る水準でした。

貧困層の生活水準

  • 貧困層の停滞: この時期、日本の平均実質所得は上昇していましたが、貧困層の生活水準は改善が見られなかったことを示唆する研究があります。

  • 公的扶助の不足: 貧困層に対する全国的な公的扶助(救済制度)は、1929年(昭和4年)に救護法が制定されるまで存在しませんでした。

富の世襲

  • 優遇された相続制度: 所得税相続税の累進性が低く、家督相続には優遇措置があったため、富が世代を超えて蓄積されやすい構造になっていました。

格差の背景

  • 資本主義の発展初期: 資本主義発展の初期段階に見られる傾向として、経済成長を牽引した輸出産業などで低賃金が競争力の源泉とみなされていた側面もありました。



時代背景(1920年頃)

       当時の税制

① 地租(ちそ)

  • 地租改正(明治時代)で導入された土地にかかる税金

  • 地価に基づく固定的な税で、土地所有者が納める。

  • 1920年頃も税収の大きな柱だった。

  • ただし、経済が貨幣ベースになっていく中で、次第に税体系の中での比重が下がっていく。

所得税(直接税)

  • 明治時代に導入(1899年)された比較的新しい税。

  • 初期は課税対象が限定的だったが、1920年頃には徐々に拡大中

  • ただし、富裕層や特定の職業層(地主、資本家など)に偏っていた。

  • 累進税率(所得が高いほど高い税率)も導入されていた。

③ 営業税(間接税)

  • 商工業者などの営業活動に課される税。

  • 一定の収入や売上に対して課税。

  • 都市部の中産階級・商人層にとっては重い負担。

④ 消費税に相当する間接税(酒税・煙草税・砂糖消費税など)

  • 政府にとって安定した財源

  • 物品の販売や消費に対して課税される形。

  • 特に酒税は重要な財源で、国家歳入のかなりの部分を占めていた。

税制の構成(1920年頃)

税目 種類 特徴・対象
地租 直接税 土地にかかる税、税率は固定的
所得税 直接税 高所得者中心、まだ限定的な適用
営業税 直接税 商業・工業などの営業活動に課税
酒税 間接税 国民から広く徴収できる安定財源
煙草税 間接税 同上
消費物品税等 間接税 贅沢品などへの課税(間接的)

税制の課題(当時)

  • 税負担の不公平:地主や富裕層には比較的優遇があり、庶民には間接税という形で重い負担がかかった。

  • 税収の安定性に課題:経済が不安定な中で税収も変動しやすかった。

  • 課税技術の未熟さ:徴税の効率が悪く、脱税や申告漏れも多かった。

  • 財政赤字の慢性化:軍事費や対外政策で財政圧力が強まり、増税国債発行で対応。

税制のまとめ

1920年頃の日本の税制は、地租や酒税などの伝統的税収に依存しつつ、徐々に所得税などの近代的な税制へ移行し始めていた段階でした。富の集中や都市化が進む中で、税負担の公平性や徴税の効率性が大きな課題となっていました。

       格差の劇的な縮小

この大きな貧富の差は、以下の複合的な要因を経て、戦時体制から戦後にかけて劇的に縮小しました。

戦時下の経済統制

1938年頃に戦時体制へ移行し、軍事統制が強化されました。

この統制により、地代・配当・利子などの「不労所得」(資本所得)や重役報酬に厳しい制限が加えられ、富裕層の所得が抑制されました。

戦時下の資産破壊

戦時インフレが金融資産の価値を大きく目減りさせました。

都市部への空襲が実物資産(建物など)を破壊し、富裕層の資産に大打撃を与えました。

    資本主義と経済格差

資本主義においては、経済格差があることで「より良い生活を目指す」という動機が生まれ、生産性や競争力が高まります。しかし、格差が広がりすぎると購買層が減少し、需要が縮小して経済が停滞します。そのため、格差と消費層のバランスを取ることが、持続的な成長には不可欠です。

GHQ政策

その為、戦後日本ではGHQ連合国軍総司令部)の主導により、富の再分配と民主化を目的とした重要な政策が実施されました。

主なものとして、農地改革(地主の富の源泉であった農地を小作農に解放・再分配)、財閥解体累進課税や資産税(富裕税)の導入などがあり、これにより富裕層の富がさらに解体・再分配され、格差は劇的に縮小しました。

これらの要因が重なり、戦前の極端な格差社会は終焉を迎え、戦後日本の比較的平等な社会基盤が築かれることになりました。

      まとめ

戦前は立憲君主制の時代でした。ですから現在の立憲民主国家の枠組みでは捉えられない時代でした。大正デモクラシーは国体(天皇を君主に掲げる立憲君主制)を維持するために使われ、国体を危うくする可能性を秘めた共産主義無政府主義などは厳しく禁止されました。このように現代の感覚とは大きく違っていました。

当時は富裕層や特権階級はその特権的な立場や経済的基盤を使って、直接的な戦闘への参加や、戦時の劣悪な環境、空襲の危険から身を守る手段にしました。ですから、一般の農民、労働者、および最前線の兵士と比較すると、富裕層・特権階級の死亡リスクは相対的に低かったと見られます。

私の父は多くの借家を持つ家の跡取りで、大学も専科は卒業しました。だから、軍隊に入り主計将校になりました。地位は少尉でしたが、関東軍に着任していて、ソ連が不可侵条約を破棄するまでは、戦闘を知りません、

主計はロジスチックを担っていたので、南の戦線がひっ迫していた事には気づいていたようです。大本営発表を国のプロパンガスと思っていたのでしょう。

騙されていたのは一般国民だったと思いますが、最近の社会情勢も似ているのではと思います。

 

 

「平和の配当」と「戦争」

      はじめに

戦争は、そのコストを冷静に見積もると極めて非経済的な行為です。都市、インフラ、生産設備といった有形資産を破壊し(直接的な破壊コスト)、多数の人命を失う(無限大の人的資本の損失)。さらに、本来教育、医療、科学技術といった生産性の高い分野に投資できたはずの資金を兵器開発や維持に費やす(戦費の異常な浪費と機会費用)。

にもかかわらず戦争が絶えないのは、その動機が経済合理性ではなく、政治的、イデオロギー的、歴史的な要因、さらには人類の心の構造に深く根ざしているからです。

  認知革命と「戦争という協力」

戦争がなぜ大規模かつ持続的に行われるようになったのかという疑問に対する一つの答えが、人類の進化の過程で起こった認知革命にあります。

  

認知革命と虚構を信じる力

約7万年前から3万年前に、ホモ・サピエンスの脳内で認知革命が起こりました。この変化の核心は、「虚構(フィクション)を信じる能力」、すなわち実際には存在しない国家、宗教、お金、人権といった「共通の物語」を創造し、それを大勢で共有できるようになったことです。

虚構がもたらした組織的暴力

この「物語の共有」能力は、文明の発展を促すと同時に、戦争を組織化し、大規模化させる温床となりました。

  • 共通の神観念や国家的:イデオロギー的な結びつきによって、血縁に依存しない大規模な協力関係が成立します。これにより数千〜数万人を擁する軍隊を動員できるようになります。規模が拡大すると統制のための階層化が進み、指導層は人々の不満を外部の「敵」へ向けさせることで社会的結束を維持・強化しました。
  • イデオロギーによる対立: 異なる「虚構」を信じる集団が衝突し、宗教戦争や国家間戦争を引き起こしました。
  • 持続的な暴力の体系化: 国家や軍隊という虚構のもとで、暴力が訓練され、制度化され、継続的に行使されるようになりました。

つまり、認知革命によって人類は「大規模な協力の力」を得ましたが、それは同時に「戦争を遂行できる力」でもあったのです。

戦争がなくならないその他の要因

戦争は、人類の心の構造と、それを取り巻く社会的な利害や欲望によって永続します。

利害と欲望: 国家や集団は、土地、資源、経済的利益、政治的支配を求めて競い合い、対立を生み出します。古代の領土争いから現代のエネルギー・情報戦まで、複雑に絡み合った経済的・政治的利害が常に火種となっています。

人間の内面: 欲望、恐れ、嫉妬、支配欲といった感情は他者との対立を生みやすく、権力者の野心や信念の暴走が、個人の感情を国家規模の破壊へと拡大させます。

政治・外交の限界: 国家間の不信感や過去の対立、誤った判断、そして国際機関の機能不全が、平和維持を難しくしています。

       日本の復興と「平和の配当」

第二次世界大戦で壊滅した日本の戦後復興の道のりは、戦争の「非経済性」に対する強力な教訓を提供しています。

低防衛費が生んだ「平和の配当」: 日本は平和憲法の下、防衛費をGDPの約1%程度に抑制し続けました。この軍事費の抑制によって得られた経済的恩恵は、「平和の配当(Peace Dividend)」と呼ばれます。

経済成長への集中: 軍事力維持に費やされるべきだった巨額の資金が、産業への投資、技術開発、社会インフラの整備といった生産性の高い分野へと振り向けられました。優秀な人材も民間産業に集中しました。

日本は、戦争という非経済的行為から離脱し、「平和という最大の経済合理性」を最大限に活用したと言えるのです。平和の維持は単なる理想論ではなく、最も賢明な経済戦略であることを示しています。

      日本と🇺🇸 米国の防衛費

日米の防衛費の対GDP比は、1970年から2023年にかけて大きく接近しました。この変化は、冷戦終結に伴う米国の削減と、近年の安全保障環境の変化に伴う日本の増額によってもたらされています。

項目 1970年 2023年(推計) 変化の傾向
米国 (軍事費/GDP) 7.8% 3.4% 冷戦終結対テロ戦争後、大きく減少傾向。
日本 (防衛費/GDP) 0.82% 1.2% (2023年SIPRI) 長らく1%前後で安定した後、近年増加傾向。
比率の差 (米/日) 10倍 3倍弱 格差が大幅に縮小。

日本の防衛費の動向:「1%の壁」の突破

日本は1976年に閣議決定された「GNP(後にGDP)比1%枠」を事実上の上限として維持してきました。

  • 安定した低水準期(1965年~2020年頃): 防衛費は長らくGDPの 0.9%~1.0%の狭い範囲で推移しました。

  • 「1%の壁」突破(2020年以降): 国際情勢の変化(中国の台頭など)を受け、防衛費は2021年に1.02%を記録し、長年の制約を超えました。

  • 今後の目標: 政府は防衛力の抜本的強化を掲げ、2027年度までに防衛費と関連経費の合計を GDP比2%に達することを目標としています。

     米国の政党による軍事費

1970年以降の米国のGDP比軍事費の平均を、大統領の所属政党別(共和党民主党)に比較すると、共和党政権下の方が平均値が高いことがわかります。

政党 政権期間 平均GDP比軍事費(%) (1970年〜2023年)
共和党 1970-1976, 1981-1992, 2001-2008, 2017-2020 4.80%
民主党 1977-1980, 1993-2000, 2009-2016, 2021-2023 4.13%

全体として、共和党政権下の平均は民主党政権よりも約0.67ポイント高い水準です。

平均値の差を生んだ歴史的要因

この平均値の差は、各政権期に発生した大規模な地政学的な出来事と予算決定に起因しています。

  1. 冷戦下の軍備増強 (1980年代):

  2. テロとの戦い (2000年代):

  3. 冷戦終結後の削減 (1990年代):

    • 民主党クリントン政権)下では、冷戦終結後の「平和の配当」として軍事費が大幅に削減され、GDP比は最低水準(約3.0%)にまで低下しました。この期間が民主党の平均を低く抑える主要因となりました。

年代 傾向 主な背景
1980年代 共和党下で急増 冷戦の最終段階における大規模な軍拡競争(レーガン政権)
1990年代 民主党下で大幅削減 冷戦終結による「平和の配当」(クリントン政権
2000年代 共和党下で再び急増 9.11同時多発テロ対テロ戦争イラクアフガニスタン

「戦争」と「平和の配当」というテーマのブログの「まとめ」セクションを、より強力な結論となるように、内容を再構成し、流れを整えました。

 

       まとめ

戦争は、経済的合理性を完全に欠く行為でありながら、人類の歴史から絶えることがありません。その根源は、約7万年前の認知革命によって人類が獲得した、「虚構を共有し、大規模に協力する能力」にあります。この人類特有の能力は、文明の発展と同時に、大規模で組織的な暴力である戦争を遂行する力をも人類にもたらしたのです。現代の戦争は、この認知的な基盤の上に、複雑な利害、権力への欲望、そして国際的な不信感が絡み合って発生しています。さらに歴史を遡れば、第二次世界大戦以前は貧富の差が大きく、所得税など直接税を払う人が少なかった時代において、富裕層や特権階級の死亡率は平均より低かったと推計されています。そして、大政翼賛会や国防婦人会で中心的な役割を担ったのは、一般庶民でした。

戦後日本が歩んだ歴史は、私たちに重要な教訓を与えています。日本は戦後長らくは防衛費をGDP比1%程度に抑え、経済活動や社会基盤の整備に振り向け、軍事費が少ない分る「平和の配当」を享受し、奇跡的な経済成長を遂げました。この歴史は、過度な軍事費は経済の足かせとなり、平和の維持こそが持続的な経済発展の鍵となることを強く示唆しています。現在、日本は安全保障環境の変化に対応するため、防衛費の対GDP比を1%から2%へ増額する方向へ舵を切りました。このGDP比1%の差は、一見小さな数字に見えますが、国家予算全体から見れば極めて大きなものです。予算には社会保障費、国土強靭化費(道路建設や保守を含む)、公務員の給与を含む施設の維持管理など、国民生活に直結する膨大な費用が含まれています。防衛費の増加は、裏を返せばこれらの分野に回るべき資金、すなわち「平和の配当」が減少していることを意味します。私たちは、この防衛費増額が単なる軍事力の強化に終わるのではなく、同時に外交努力、国際協力、そして国内の安定を通じて、真の安全保障と持続可能な平和をいかに追求できるのかを問い続ける必要があります。平和の配当とは、単なる財政上の余裕ではなく、私たちが作りたい未来、築きたい社会の形を映す鏡なのです。

 

G7国の平均GDP比軍事費は1.74%です。ただ、どこまで軍事費であるのかは不定であり、1.9とする人もいます

生活苦、ポピュリズム、ナショナリズムの悪循環

       はじめに

現代世界の政治的不安定と社会分断の背景には、
「生活苦(経済的不安)」→「ポピュリズム」→「ナショナリズム
という三位一体の危険な連鎖があります。

この連鎖は、人々の不満を政治的に利用することで一時的な熱狂を生み出しますが、結果として貧困層をさらに苦しめ、社会の分断を固定化する方向へと進みます。
以下では、この構造がどのように生まれ、どのように悪循環を形成していくのかを考察します。

    ポピュリズムの土壌

ポピュリズムが台頭する起点は、人々の経済的困窮と将来への不安です。

段階 現象 内容
強い不満の発生 「報われない社会」への怒り 所得格差の拡大や雇用の不安定化が、「真面目に働いても報われない」という社会への不満を生み出す。
「敵」の特定 既得権益層への敵意 政治家やメディアなど「見て見ぬふりをしている」とされるエリート層が攻撃対象となる。
ポピュリストの登場 感情的な代弁者の出現 単純で力強い言葉を用い、人々の不満を代弁するポピュリストが支持を集める。

ポピュリズムは、複雑な社会問題を単純化し、「善良な庶民(真の国民)」対「腐敗したエリート(既得権益層)」という構図で社会を分断します。
指導者は「庶民の唯一の代弁者」を自称し、体制攻撃を通じて支持を拡大していくのです。

     ナショナリズムによる怒り

ポピュリストが支持を固めるうえで利用する「エンジン」が、ナショナリズム国民主義)です。

ポピュリストは、国内のエリートだけでなく「外部の敵」を設定し、人々の怒りをそちらに向けます。そして、それらの人は外国勢力の手先や外国人に子孫として「反日」として閉じ込めます。

  • 経済の敵(グローバリズム
    自由貿易が雇用を奪った」「外国企業に国益が流出している」と訴える。

  • 社会の敵(移民・外国人)
    「移民が社会保障を食い物にしている」といった排他的言説で、不安をマイノリティへ向けさせる。

ナショナリズムは「我々は一つ」という一体感を大切にするので、日本は単一民族でなければいけません。そして、本来向き合うべきは生活苦や格差の問題のはずです。

            皮肉な現実

ナショナリズム的政策は心理的な満足を与えるものの、長期的には貧困層の状況を悪化させます。

政策・現象 短期的効果 実際の影響(貧困層
心理的充足感と帰属意識 「誇り」を得る 精神的には満たされるが、生活は改善しない
保護主義(関税など) 国内産業の保護 輸入品価格が上昇し、生活必需品が高騰。低所得層の負担増
排他的政策 移民・外国資本の排除 投資・人材の減少で経済成長が停滞、雇用機会を喪失
構造改革の放置 政治的安定の演出 教育格差・税制不平等などの根本問題が放置される

ナショナリズムは「誰を憎むべきか」という簡単な答えを与えますが、「どうすれば豊かになれるか」という本質的な問いには答えられません。
その結果、貧困層の困難は固定化され、社会の分断が深まります。

           第二次世界大戦に見る「命の格差」

この「構造的格差による生存率の差」は、歴史にも見られます。
第二次世界大戦では、日本の上流階級・富裕層の死亡率は庶民よりも明らかに低かったと考えられています。

第一次世界大戦のヨーロッパでは、貴族が「ノブレス・オブリージュ(高貴なる義務)」の精神から戦場に赴く例も多く見られました。
しかし、日本では明治以降の四民平等のもと、社会的地位や財力が命を守る盾となりました。

戦場に行く可能性の差

階層 主な兵役状況 死亡リスク
一般庶民・農民・労働者 一般兵として徴兵、前線勤務 戦死・病死のリスクが非常に高い
上流階級・財界人子弟 士官・後方勤務・行政職など 最前線を避けることが可能。徴兵免除も多い

国内生活環境の差

階層 主な生活環境 生存率が高かった理由
一般庶民 都市部の住宅密集地、防空壕・避難先不足 空襲・栄養失調・病死の多発
富裕層・権力者層 地方疎開・頑丈な屋敷・物資確保 食料・薬へのアクセスと避難能力が高い

この傾向は日本に限らず、英国やドイツなどでも確認されています。
労働者階級は一般兵や民間人として高い犠牲を強いられた一方、上流階級は将校や後方勤務に就き、比較的安全な立場にありました。
第二次世界大戦は、階級による「命の格差」が最も顕著に表れた総力戦だったといえます。

                                 まとめ 

生活苦がポピュリズムを生み、ポピュリズムナショナリズムを煽り、
ナショナリズムが再び生活苦を拡大させる——。
この負の循環は、民主主義と社会の安定を根底から揺るがす構造です。

この連鎖を断ち切るには、

  • 感情的な敵意や単純なスローガンに流されず、

  • 経済格差・教育・雇用の不安定といった根本問題に冷静に向き合い、

  • 長期的で現実的な解決策を社会全体で模索すること

が求められます。

 

錯誤:国家と国民

        はじめに

「国が豊かであれば、国民も豊かである」という考えは、多くの人が自然と抱く感覚かもしれません。この感覚の根底には、国際スポーツの場で自国の選手を熱心に応援するのと同様の、国に対する一体感や期待(ファン心理)が存在しています。

GDPは経済指標の代表ですが、これは国全体を表す数字です。GDPが高いからと言って国民が豊かとはなりません。国民の豊かさの参考とするなら一人当たりにする必要がありますが、ほとんど報道されません。報道陣は当然知っていますが、政府に忖度しているのでしょうか。日本のGDPは世界4位ですが、一人当たりでは世界36位、アジアで7位(中東はアジアに入れていません)です。物価も考慮すれば、一人当たりでは40位で、韓国は29位です。

       国家と国民は「別物」

しかし、このデターは必ずしも直感とは一致しません。それは報道による印象操作に惑わせられているからです。「国家」と「国民」は切り離して考えるべき対象です。実際、豊かな国はルクセンブルクアイルランド・スイス・シンガポールアイスランドが上位5位で、すべて小国です。さらに、皮肉なことに、国家の富が増大することが、必ずしも国民一人ひとりの豊かさには繋がらない、あるいは国民をかえって貧しくしてしまうというケースすら見られるのです。

         税金

税金はその典型です。税収が増えれば国家財政は潤います。しかし、それは国民からの負担の増加を意味します。つまり、国民の懐から国家に富が移されているに過ぎません。国民にとっては可処分所得が減り、生活は苦しくなっていきます。

       江戸時代の百姓

江戸時代は、一つの「連邦制」のような体制でした。藩が年貢を取り立て、地域を統治していたため、制度や慣習も藩ごとに異なっていました。

農村社会の内部にも大きな格差がありました。収穫のほとんどを年貢として取り上げられ、食べていくのがやっとの「水飲み百姓」がいる一方で、藩に金を貸したり、酒造業などを営む庄屋や村役人(三役)も存在しました。彼らの多くは、現代でいえば事業家に近く、広大な土地や借家を所有し、時には上級武士に匹敵するほどの豊かな暮らしをしていたのです。つまり、「農民」といっても、その生活実態は千差万別でした。

一方で、困窮する農民たちの多くは年貢の重さに苦しみ、自らの暮らしを切り詰めざるを得ませんでした。それでもなお、「自分の藩主は石高が多い」「城が立派だ」と誇りにする人々がいました。藩の繁栄と自らの生活を重ね合わせ、藩の豊かさを自分の豊かさと思うことで、アイデンティティを得ていました。

                                   GDP

私たちはしばしば、国家と国民を意識的にも無意識的にも取り違えてしまいます。GDPはその典型例ですが、こうした錯覚は指標や言説のほとんどに当てはまります。人口の減ってゆく日本では、GDPが下がっていくのは当たり前です。さらに、生産人口は人口に先立って減っていきます。政治やメディアによる印象操作は常に行われ、「国が豊かなら私たちも豊かだ」と受け取りやすい感情を喚起します。しかし、表面的な“豊かさ”と個々人の暮らしの実態は必ずしも一致しません。受け手である私たちがもっと慎重に考え、演出の裏側にある実態を見抜くことが必要です。

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報道される名目GDPで世界50位までです

順位 名称 単位: 10億USドル 前年比 地域
1位   アメリカ 29184.9 北米
2位   中国 18748.01 アジア
3位   ドイツ 4658.53 ヨーロッパ
4位   日本 4026.21 アジア
5位   インド 3909.1 アジア
6位   イギリス 3644.64 ヨーロッパ
7位   フランス 3162.02 ヨーロッパ
8位   イタリア 2372.06 ヨーロッパ
9位   カナダ 2241.25 1 北米
10位   ブラジル 2171.34 -1 中南米
11位   ロシア 2161.21 ヨーロッパ
12位   韓国 1869.71 アジア
13位   メキシコ 1852.72 中南米
14位   オーストラリア 1796.81 オセアニア
15位   スペイン 1722.23 ヨーロッパ
16位   インドネシア 1396.3 アジア
17位   トルコ 1322.41 1 中東
18位   オランダ 1227.17 -1 ヨーロッパ
19位   サウジアラビア 1085.36 中東
20位   スイス 936.74 ヨーロッパ
21位   ポーランド 908.58 ヨーロッパ
22位   台湾 782.44 アジア
23位   ベルギー 664.97 1 ヨーロッパ
24位   アルゼンチン 632.15 -1 中南米
25位   スウェーデン 610.12 ヨーロッパ
26位   アイルランド 577.22 ヨーロッパ
27位   シンガポール 547.39 4 アジア
28位   イスラエル 540.38 2 中東
29位   アラブ首長国連邦 537.08 -1 中東
30位   タイ 526.41 -3 アジア
31位   オーストリア 521.27 -2 ヨーロッパ
32位   ノルウェー 483.73 ヨーロッパ
33位   フィリピン 461.62 1 アジア
34位   ベトナム 459.47 1 アジア
35位   バングラデシュ 451.1 -2 アジア
36位   デンマーク 429.46 ヨーロッパ
37位   マレーシア 419.62 アジア
38位   コロンビア 418.54 4 中南米
39位   香港 407.11 アジア
40位   イラン 401.36 1 中東
41位   南アフリカ 400.19 -1 アフリカ
42位   ルーマニア 384.15 2 ヨーロッパ
43位   エジプト 383.11 -5 アフリカ
44位   パキスタン 373.08 2 アジア
45位   チェコ 344.93 ヨーロッパ
46位   チリ 330.21 1 中南米
47位   ポルトガル 308.59 2 ヨーロッパ
48位   フィンランド 298.83 ヨーロッパ
49位   ペルー 289.07 2 中南米
50位   カザフスタン 284.81 2 ヨーロッパ

物価などを考慮した一人当たりの実質GDPの50位までです。同じものを買えるとした比較です。

順位 名称 単位: USドル 前年比 地域
1位   シンガポール 150689.49 1 アジア
2位   ルクセンブルク 149582.78 -1 ヨーロッパ
3位   アイルランド 129433.16 ヨーロッパ
4位   マカオ 128025.82 アジア
5位   カタール 116249.33 中東
6位   ノルウェー 103585.62 ヨーロッパ
7位   スイス 94937.22 ヨーロッパ
8位   ブルネイ 91695.05 アジア
9位   アメリカ 85812.18 北米
10位   デンマーク 84762.01 ヨーロッパ
11位   ガイアナ 83483.29 22 中南米
12位   オランダ 81705.3 -1 ヨーロッパ
13位   サンマリノ 80322.06 ヨーロッパ
14位   台湾 79564.85 1 アジア
15位   アイスランド 79049.09 -3 ヨーロッパ
16位   アラブ首長国連邦 77094.76 -2 中東
17位   香港 75115.01 アジア
18位   ベルギー 73500.43 ヨーロッパ
19位   マルタ 73258.78 2 ヨーロッパ
20位   オーストリア 72818.69 -4 ヨーロッパ
21位   スウェーデン 72232.64 -2 ヨーロッパ
22位   ドイツ 70878.42 -2 ヨーロッパ
23位   アンドラ 70501.4 -1 ヨーロッパ
24位   オーストラリア 69970.69 -1 オセアニア
25位   バーレーン 65888.99 -1 中東
26位   フィンランド 64249.34 -1 ヨーロッパ
27位   カナダ 63760.25 -1 北米
28位   フランス 63698.38 -1 ヨーロッパ
29位   韓国 62697.07 1 アジア
30位   キプロス 62205.92 1 ヨーロッパ
31位   イギリス 61921.24 -3 ヨーロッパ
32位   イタリア 61165.47 ヨーロッパ
33位   サウジアラビア 59741.03 -4 中東
34位   チェコ 56744.32 ヨーロッパ
35位   スロベニア 55619.03 1 ヨーロッパ
36位   スペイン 54451.02 2 ヨーロッパ
37位   リトアニア 54215.98 2 ヨーロッパ
38位   イスラエル 53928.73 -1 中東
39位   ニュージーランド 53845.62 -4 オセアニア
40位   日本 52712.61 アジア
41位   ポーランド 51983.43 1 ヨーロッパ
42位   クウェート 49708.1 -1 中東
43位   クロアチア 48565.63 2 ヨーロッパ
44位   エストニア 48112.37 -1 ヨーロッパ
45位   ポルトガル 47996.66 -1 ヨーロッパ
46位   ロシア 47269.22 2 ヨーロッパ
47位   ルーマニア 46906.35 -1 ヨーロッパ
48位   ハンガリー 46545.92 -1 ヨーロッパ
49位   スロバキア 45582.77 ヨーロッパ
50位   ギリシャ 42922.83 1 ヨーロッパ

 

日本から世界へ!藤井風・Ado・YOASOBI

       はじめに

最近は藤井風、Ado、YOASOBIをよく聴いています。彼らが日本発のアーティストとして世界でも活躍していることは本当に素晴らしいと思います。過去に世界的な大ヒットといえば、坂本九の「上を向いて歩こう」がありましたが、海外では「スキヤキ・ソング」と呼ばれ、曲の内容とは全く関係のない名前で紹介されました。その成功も一度きりの単発的なものでした。
しかし現在の藤井風、Ado、YOASOBIには、海外でもリサイタルが成立するほどのヒット曲が複数あり、継続的に世界のリスナーを魅了している点が大きな違いだと感じます。

      歌謡曲とj-pop

謡曲の時代は、レコード会社やテレビ局のプロダクション番組制作者が強い影響力を持っていました。彼らが新人を発掘し、楽曲を制作し、テレビやラジオといったマスメディアを通じてプロモーションを行うという、ピラミッド型の構造が主流でした。このシステムは、ヒット曲を生み出し、巨大な産業として成長する一方で、アーティストが表現したいことよりも、売れるためのマーケティング戦略が優先されることも少なくありませんでした。

一方、J-POP、特に最近のTikTokYouTubeといったデジタルプラットフォームの普及は、この構造を大きく変えました。これらのプラットフォームでは、アーティストが自分の作品を直接リスナーに届けることが可能です。これにより、以下のような変化が起こっています。

 

   J-POPとデジタルプラットフォーム

近年、J-POPを取り巻く環境は大きく変化しました。テレビやラジオに頼る必要がなくなり、アーティスト自身がSNSを活用してファンと直接コミュニケーションを取ったり、ライブ配信で楽曲を披露したりするなど、プロモーションの手段は多様化しています。その結果、特定のプロダクションの意向に縛られることなく、アーティスト自身の個性や世界観を前面に打ち出すことが可能になりました。

ビジネスモデルも大きく変化しました。かつては莫大な制作費を投じて「大ヒット」を狙うことが中心でしたが、現在は多くのリスナーに「共感」を得てファンベースを拡大するモデルへとシフトしています。これは利潤追求がなくなったわけではなく、その形が変化したと捉えるべきでしょう。YouTubeでの広告収益、ライブ配信での投げ銭、オンラインコミュニティの会員費、さらにはグッズ販売など、多様な収益源を組み合わせることで、アーティストは安定的に活動を続けやすくなっています。

こうした仕組みによって、短期的なヒットを追い求めるのではなく、長期的にファンとの関係を築いていくことが重視されるようになりました。その象徴的な例がYOASOBIの大ヒット曲「アイドル」です。この楽曲はアイドル文化そのものを批判的に描いており、従来のようにアイドルビジネスで利益を上げてきた大手プロダクションや制作会社であれば扱うことはなかったでしょう。20世紀では世に出にくかった作品が、デジタル時代の自由な発信環境によって広く支持され、国際的なヒットにまで成長したのです。

       歌謡界の歌手

謡曲文化は日本独自の物であったように思います
  • 謡曲は、日本独自の文化と深く結びついて発展した音楽ジャンルです。その独自性は、以下のような点にあります。
  • 演歌や民謡の影響: 独特の「こぶし」や「節回し」といった、日本的な歌唱法やメロディーラインが特徴です。
  • 叙情的な歌詞: 季節の移り変わりや、日本の風土、人情などを繊細に描いた歌詞が多く、日本語の持つ響きやニュアンスを最大限に活かしています。
  • メディアとの密接な関係: テレビやラジオの歌番組、レコード会社主導のプロモーションによって、大衆文化として定着しました。
これらの要素は、当時の海外のポピュラー音楽とは大きく異なっており、海外に直接輸出されることはほとんどありませんでした。歌謡曲は、どちらかというと「国内で完結する文化」だったと言えるでしょう。
 
インターネットとSNS: YouTubeTikTokといったプラットフォームが、国境を越えて音楽を届けることを可能にしました。アーティストが自ら世界に向けて発信できるようになったことが、大きな要因です。アニメとの結びつき: 「アニメ」が世界的なカルチャーとなったことで、アニメの主題歌を通じて日本の音楽が海外のリスナーに知られる機会が飛躍的に増えました。これは、海外のリスナーがJ-POPに触れる最も一般的な入り口の一つになっています。謡曲が「日本独自の文化」として、内向きに発展した音楽だったのに対し、現代のJ-POPは**「世界を意識した音楽」**として、インターネットを駆使して海外に積極的にアプローチしています。の違いは、日本の音楽産業のビジネスモデルが、国内市場を前提としたものから、グローバルな視点を持つものへと変化したことを示していると言えるでしょう。

                 J-POPの海外進出

一方、現在のJ-POPの海外進出は、歌謡曲の時代とは全く異なる状況にあります。

 現代のJ-POPは、洋楽のポップスやK-POPなど、海外のヒットチャートのトレンドを意識した楽曲制作が行われています。リズムやサウンド、ミックスなどがよりグローバルな基準に近づいており、海外のリスナーにも受け入れられやすい音楽になっています。

それには、YouTubeTikTokといったプラットフォームが、国境を越えて音楽を届けることを可能にしたことが大きかったと思います。アーティストが自ら世界に向けて発信できるようになったことが、出来るようになりました。

アニメとの結びつき: 「アニメ」が世界的なカルチャーとなったことで、アニメの主題歌を通じて日本の音楽が海外のリスナーに知られる機会が飛躍的に増えました。これは、海外のリスナーがJ-POPに触れる最も一般的な入り口の一つになっています。

    戦後日本の世界的ヒット曲

1960年代
坂本九上を向いて歩こうSukiyaki)」1961)
1963年に全米ビルボードHot100で 1位 を獲得。

日本人歌手として唯一の全米1位曲。

世界中でカバーされ、今でも「日本の歌といえばこれ」という存在。

1980年代

YMOイエロー・マジック・オーケストラ

ライディーン」「テクノポリス」などが欧米で話題に。

シンセサイザーを使ったサウンドで、のちのテクノ/エレクトロの礎を築いた。

全米ビルボード200にアルバムがランクイン。

寺尾聰ルビーの指環」(1981)

世界チャート入りは限定的だが、アジア圏では広く人気。

1990年代

X JAPAN

欧米でのチャートインは少ないが、ビジュアル系というジャンルを世界に広めた。

特に「Endless Rain」「Kurenai」が海外ファンに浸透。

久石譲 & 宮崎駿アニメ音楽(特に『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』)

サントラがヨーロッパやアジアで高評価。

千と千尋』主題歌「いつも何度でも」は海外ファンに人気。

2000年代

宇多田ヒカル「First Love」(1999〜2000)

アジア圏で爆発的ヒット(台湾・香港・韓国)。

世界的な売上は800万枚以上、日本の歴代アルバム売上1位。

ドラゴンボール」「セーラームーン」「ポケモン」などアニメ主題歌

海外のファンの間で「CHA-LA HEAD-CHA-LA」(影山ヒロノブ)などが大人気。

2010年代

BABYMETAL「ギミチョコ!!」(2014)

YouTubeで海外から火がつき、米英の大型フェス出演。

Billboard World Albumsで1位。

Perfume

欧米ツアー成功、日本のテクノポップを世界へ。

米津玄師「Lemon」(2018)

主にアジア圏で大ヒット、YouTube再生10億回超。

2020年代

YOASOBI「夜に駆ける」:YouTube & Spotifyで世界的に再生され、アジア圏で大人気。

Ado「うっせぇわ」「新時代(ワンピース映画)」

特に「新時代」はアジアで大ヒット。

藤井風「死ぬのがいいわ」

TikTokを通じてインド・東南アジア・中東で大流行。Spotifyグローバルチャート入り。

Aimer「残響散歌」

鬼滅の刃』の影響でSpotifyグローバルチャート上位に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歌手 音楽的要素 歌詞的特徴 文化的背景 世界で受ける理由
YOASOBI ポップスにエレクトロニカ要素を融合、透明感ある旋律 小説を原作にした物語性、情景描写に強み ネット発の音楽ユニットとして若者文化に直結 メロディーが普遍的に美しく、言語を超えて感情を伝えられる
Ado ロック・メタル的なシャウトから繊細な声まで幅広い表現 強烈で個性的、自己表現や感情を直球で伝える歌詞 ボカロ文化とアニメ映画『ワンピース』などとの親和性 独自の歌唱スタイルと圧倒的なエネルギーが国境を越える
藤井風 ジャズ、R&B、クラシックなどを取り込み、即興性の高い演奏 岡山弁と標準語をシームレスに融合、ユーモアと哲学性を併せ持つ 幼少期からピアノに親しみ、YouTubeでの弾き語りが原点 日本的な方言文化と国際的な音楽感覚を融合し、オリジナリティとして受け入れられる

 

         おわりに

日本の音楽にはもともと素晴らしい力があります。過去にも優れた歌手は数多く存在しましたが、大手プロダクションに所属しなければ番組制作会社の目に留まらず、なかなか表舞台に出られない時代が長く続きました。プロダクションの意向に従わなければ活動の幅が限られ、個性や表現が抑え込まれてしまうことも少なくありませんでした。

しかし現在は、アーティスト自身がSNSや配信サービスを通じて直接リスナーとつながることができます。発信内容を誰かにおもねる必要もなく、自分らしさをそのまま音楽に反映できるようになった結果、より自由で質の高い作品が次々と生まれているように感じます。

「急に才能ある歌手が増えた」のではなく、過去からずっと存在していた優れたアーティストたちが、ようやく自由に羽ばたける環境が整ったのだと思います。