ある考え方では

あるの視点から

生命活動と膜:エントロピーの視点から

はじめに

「生命体」は恒常性を維持し、哺乳動物や鳥類では体温を一定に保ち、細胞内外のイオン濃度も大きく変わらないようにしています。この特性は、瘦身がリバウンドを起こす仕組みにも関係しています。「生命体」は秩序を維持して「エントロピー増大の法則」に逆らっているように見えますが、生命体以外も含めてみると、全体では増大に法則は維持されています。内と外を膜で区別し、恒常性を維持するためにエントロピーを内から外に出します。この機構を「代謝」と言います。

ウィルスのように膜を持たないものは生命体と言い切れず、細胞に感染して宿主の膜を利用しながら生命現象に影響を与えます。膜は物質の出入りを調整することでエントロピーの増大を抑えていますが、逆に言うと細胞外のエントロピーを増大させて中の恒常性を保っているともいえます。

生命 - Wikipedia


 

1. 情報

情報はエントロピー増大に逆らいます。生命体においてこの役割は 遺伝子が担います。遺伝情報や環境から得られる信号など、生命の維持や行動に必要なあらゆるデータを使っています。

  • たとえば、DNA配列やタンパク質の構造は、特定の秩序に基づく情報です。この秩序ある情報を使うことで、生命はエネルギーを効率的に使い、無秩序さを抑えることができます。
  • 情報理論的には、情報が増えるとそのシステムの「不確実性」が減少し、エントロピーが低下します。したがって、情報を効率的に伝達し利用することが、生命体が安定した状態を維持するカギとなっています。

2. 遺伝子

遺伝子は、生命の秩序と複雑さを形作る基本要素であり、情報の一部として次世代に生命維持と進化のためのコードを伝えています。この遺伝情報はDNAの複製、転写、翻訳の過程を通じて維持されます。これらの過程にはエネルギーが消費され、秩序ある分子構造が形成されるため、「自己複製」の機能はエントロピー増大の流れに逆らい、生命体内で低エントロピーの状態を保つ上で重要な役割を果たします。

進化の過程では、「エネルギー効率が高く秩序を保つ」遺伝子が自然選択により残され、遺伝情報の体系が構築されてきました。DNAの二重らせん構造により、コピーミスが少なくなるように、片方の鎖にミスがあれば、もう片方で補正します。しかし、一部のウィルスは二重構造を持たないため、頻繁にコピーミスが起こり、HIVがその典型で、効果ある薬もウィルス自体が変わってしまうため長続きしません。二重らせんの両方の同じ場所にミスが起こることがあります。その多くは機能しない遺伝子が形成され、細胞が死にますが、稀に機能する場合があり、突然変異が発生します。

この突然変異が進化の源泉であり、生物に多様性をもたらします。新たに生まれた突然変異の中で環境に適応したものが生き残り、進化を続けていくのです。私たちホモサピエンスも、このようにして生まれました。

遺伝子 - Wikipedia

デオキシリボ核酸 - Wikipedia

3.

細胞膜やオルガネラの膜は、生命の内部環境と外部環境を隔て、エントロピーを制御する役割を果たしています。膜は物質の出入りを選択的に制御することで、生命体内の秩序を維持します。

  • 細胞膜は半透性を持ち、選択的に物質を出し入れすることで、内部のエントロピーを低く保ちながら、細胞がエネルギーを効率よく利用するのに役立っています。
  • 膜によって隔離されることで、局所的にエントロピーが低い状態が維持され、細胞内での効率的な化学反応が可能になります。膜を介して外部に熱や老廃物を排出し、全体としてはエントロピー増加が達成されています。

半透膜 - Wikipedia

まとめ

生命システムは、膜により内外を分けることで成り立っています。そして、代謝を通じて内部のエントロピーを外に排出する仕組みです。この過程で、情報の中心である遺伝子が、生命体内部に精緻な設計図と制御システムを提供し、組織的な構造を支える基盤として機能します。

エントロピーの観点から見ると、生命体は遺伝子の「乗り物」としての存在であり、遺伝子自体は自己複製を目指す物質的な存在と捉えられます。

フランケンシュタインの誘惑』には、エントロピーの視点が不足しているように感じます。さらに、昨今注目されるSDGsについても、エントロピーの視点を取り入れることで、異なる側面が見えてくるのではないでしょうか。