考え方

あるの視点から

相続税の対策と注意点

はじめに

暦年贈与は、相続対策の定石でした。しかし、今年から被相続人の死亡から過去7年以内の贈与が無効となり、贈与税は返還されますが、相続額に加算されます。高齢者には相続者への贈与がみとめられなくなったわけです。

相続税では、課税価格の合計額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた額が課税遺産総額となります。

例えば、配偶者と子供2人の場合、相続人が3人となり、基礎控除額は3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。

参考資料:
- [No.4152 相続税の計算|国税庁](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm)
- [贈与税 - Wikipedia](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B4%88%E4%B8%8E%E7%A8%8E)
- [贈与税に関する資料 : 財務省](https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/405.htm)

新たに相続対策を考え直す必要があります。

暦年課税

贈与税に関する資料 : 財務省

概要:  
毎年1月1日から12月31日までの贈与に対する課税方式

控除額:  
1人あたり110万円まで非課税

メリット:  
長期的に贈与を繰り返すことで相続財産を減らし、将来の相続税を軽減できたが、認められない期間が、被相続人の死亡日から3年以内から、7年に伸びた。70歳代では、実質的に暦年贈与ができなくなった。その結果、相続時精算課税を利用する意味が出てきた。

なお、亡くなった人のうち相続税の対象者は1割弱です。

相続時精算課税

概要:  
生前贈与も相続財産とみなす制度

控除額:  
2,500万円まで非課税

注意点:  
相続時に過去の贈与分も含めて相続税が課税される。

控除

基礎控除以外に以下の控除があります。

- 配偶者の税額軽減    No.4158 配偶者の税額の軽減|国税庁

- 未成年者の税額控除  No.4164 未成年者の税額控除|国税庁

- 障害者の税額控除  No.4167 障害者の税額控除|国税庁

- 相次相続控除  No.4168 相次相続控除|国税庁

- 贈与税額控除   No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁

 

配偶者は非常に優遇されていますが、世代を跨ぐわけではないので、次世代への相続を考えなくてはいけません。孫を養子にすることもよく行われますが、現在は1名分しか税法上の子になれません。人がいつ死ぬかはわかりませんので、確率的な余命で、推論します。それを基に、相続税をシミュレーションします。相続に慣れた税理士などの専門家に頼むことが多いと思いますが、自分でも計算しましょう。

改正点

相続財産加算期間:  
暦年課税での贈与は相続開始前3年以内から7年以内に拡大され、相続税の対象となる。

これまでは暦年贈与があり、相続時精算課税は意味がありませんでしたが、今年から贈与が認められない期間が死亡時から過去3年から7年に延び、実質的に暦年贈与の意味がなくなったことから、相続時精算課税が意味を持つようになりました。ただし、有益となるのは相続資産が3億円程度以上の人に限られ、税務署に相続時精算課税を選択することを事前に届ける必要があり、一度選択すると修正はできません。

上場株式とは、金融商品取引所に上場されている株式のことです。上場株式の評価は、課税時期の最終価格で行いますが、次の3つの月平均額のうち最も低い価格が基準になります。日々価格が変化している投資信託なども同じように評価します。

1. 課税時期の月の毎日の最終価格の月平均額
2. 課税時期の前月の毎日の最終価格の月平均額
3. 課税時期の前々月の毎日の最終価格の月平均額

また、最終価格がない場合や権利落ちがある場合は、一定の修正を行います。負担付贈与や個人間取引で取得した場合も同様に評価します。評価は「上場株式の評価明細書」を使用して行います。

相続税贈与税の税率は以下のようです。

相続税
税率 控除額
~1,000万円 10%
~3,000万円 15% 50万円
~5,000万円 20% 200万円
~1億円 30% 700万円
~2億円 40% 1,700万円
~3億円 45% 2,700万円
~6億円 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
     
贈与税
課税価格 税率 控除額
~200万円 10%
~300万円 15% 10万円
~400万円 20% 25万円
~600万円 30% 65万円
~1000万円 40% 125万円
~1500万円 45% 175万円
~3000万円 50% 250万円
3000万円超 55% 400万円
     
特例贈与税
課税価格 税率 控除額
~200万円 10%
~400万円 15% 10万円
~600万円 20% 30万円
~1000万円 30% 90万円
~1500万円 40% 190万円
~3000万円 45% 265万円
~4500万円 50% 415万円
4500万円超 55% 640万円

相続税や譲渡所得税の計算は複雑で、個別のケースに応じたシミュレーションが重要です。以下に、相続財産の売却に関する税金について一般的なポイントをまとめます。

 

相続財産の売却に関する税金のポイント

1. 相続税の取得費加算の特例  
   被相続人の死亡日から3年10か月以内に相続財産を譲渡した場合、支払った相続税額を譲渡所得の計算上の取得費に加算することができます。この特例を使うと、譲渡所得が減り、譲渡所得税が軽減される可能性があります。

2. 譲渡所得税の計算
   - 譲渡所得税は、売却価額から取得費や譲渡費用を差し引いた金額(譲渡所得)に対して課税されます。
   - 長期譲渡所得(所有期間が5年を超える)に対する税率は20.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%)。
   - 短期譲渡所得(所有期間が5年以下)に対する税率は39.63%(所得税30% + 復興特別所得税0.63% + 住民税9%)。

3. 相続税
   - 相続税率は、遺産の総額に基づいて変動し、基礎控除配偶者控除などの特例も適用されます。
   - 相続税率が高い場合、取得費加算の特例を適用しても譲渡所得税の軽減効果が相対的に小さくなることがあります。

シミュレーションの重要性

個別の状況によって結果が大きく変わるため、シミュレーションが不可欠です。以下のようなポイントを考慮する必要があります。

1. 相続財産の評価額
2. 相続税
3. 譲渡価額と譲渡時の費用
4. 取得費(相続財産の元の購入費用など)
5. 相続税率と譲渡所得税率の比較

簡単なシミュレーション例

具体的な数値を使ったシミュレーションを行うことで、相続財産を売却する場合としない場合の税金の比較ができます。例えば:

- 戦車相続財産の評価額: 1億円
- 取得費: 5千万円
- 相続税額: 2千万円
- 譲渡価額: 1億2千万円
- 相続税率: 40%

取得費加算の特例を使う場合

取得費 = 5千万円 + 2千万円 = 7千万円  
譲渡所得 = 1億2千万円 - 7千万円 = 5千万円  
譲渡所得税 = 5千万円 × 20.315% = 約1,015万円

取得費加算の特例を使わない場合

譲渡所得 = 1億2千万円 - 5千万円 = 7千万円  
譲渡所得税 = 7千万円 × 20.315% = 約1,422万円

このように、相続税率や他の条件によって最適な選択が変わります。正確なシミュレーションを行うためには、具体的な数値を基にした詳細な計算が必要です。

金融商品相続税

 金融財産の相続税

金融財産の相続に関して、相続税の計算方法や注意点を詳しく説明します。金融財産には、現金、預貯金、株式、投資信託、保険金などが含まれます。相続税の計算は複雑で、以下のポイントに注意が必要です。

 1. 相続税の基本計算方法
相続税は、遺産総額から基礎控除を引いた課税遺産総額に対して課税されます。

 2. 金融財産の評価方法

金融財産の相続税評価額は、以下のように計算されます。

現金・預貯金
現金はそのままの額で評価されます。預貯金は死亡時点の残高に加え、未収利息も含めて評価します。

株式
上場株式は死亡日の終値で評価します。非上場株式は、類似業種比準方式や純資産価額方式などを用いて評価します。

投資信託
投資信託は死亡日の基準価額(NAV)で評価します。

保険金
被相続人が契約者であり被保険者でもある保険金は、保険金受取人が受け取った保険金額で評価されます。ただし、法定相続人が受け取った場合、非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)があります。

3. 金融財産に関する特例や控除

株などの金融商品は、死亡から3年10ヶ月以内であれば、相続税も取得価格に加算できます。これは二重課税を防ぐために当然の措置だと思いますが、期限を区切らないようにしてほしいものです。現在は期限があるため、3年10ヶ月以内の良い時期に売却する方が有利な気がします。

配偶者の税額軽減
配偶者が相続する場合、法定相続分または1億6,000万円のいずれか高い方まで相続税が非課税となります。

小規模宅地等の特例
金融財産では適用されませんが、土地や建物を相続する場合の特例です。評価額を最大80%減額できます。

4. シミュレーション例

具体的な数値を使って、金融財産の相続税を計算してみます。

例:相続財産が現金1億円の場合
相続財産総額: 1億円
- 法定相続人: 3人
- 基礎控除額: 3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
- 課税遺産総額: 1億円 - 4,800万円 = 5,200万円

課税遺産総額に基づく相続税は以下のように計算されます:

(万円)   (万円) (万円) (万円)
課税額帯 税率 控除額 課税額 税額
1,000まで 10% 0 1000 100
1,000〜3,000 15% 50 2000 250
3,000〜5,000 20% 200 2000 400
5,000〜5,200 30% 700 200 60
合計       810

この例では、相続税額は810万円となります。

 5. 申告と納税

相続税の申告期限は、被相続人が死亡した日の翌日から10か月以内です。納税も同じ期限内に行わなければなりません。延納や物納が認められる場合もありますが、事前に税務署に相談が必要です。

金融財産の相続税は複雑であり、詳細なシミュレーションや専門家の助言が重要です。具体的な状況に基づいて適切な対応を行うことで、税負担を軽減することができます。

おわりに

私たち夫婦は相続税の対象者ですので、これは他人事ではありません。様々なことを考え、行動する必要があり、まとめてみました。

15年前に父の、8年前に母の相続をしました。父の時には税務署の調査も受けました。その調査では、忘れていたり価値がないと思っていた会員権を口実にして、金融機関の口座が、 実質的には亡くなった父の口座ではないかというものでした。私は名義口座の注意点とそう疑われた時に必要なことを聞いていたので、税務署にも認めてもらいましたが、知人は名義口座とされ、多額の相続税を追加されたようです。

名義口座でないことを証明するために必要な情報はネットにも載っていますので、知識を蓄えてください。

 

* 名義口座:この場合は実際は被相続人の口座であるが、名前を親族とした口座、こうすることで、相続財産を少なく見せかけ、存続税なしで、親族に渡すことが出来る脱税の方法。