はじめに
信用創造は、銀行が預金を元に貸し出しを行い、実際の現金以上の「信用」を生み出す現象です。経済にとっては非常に重要なプロセスであり、私たちの日常生活や景気変動に大きな影響を与えています。本記事では、信用創造の仕組みや、インフレやバブル景気、さらにはハイパーインフレとの関連について解説します。
信用創造のメカニズム
信用創造の基本的な流れは、銀行が預金を受け、それを元に貸し出すところから始まります。例えば、ある銀行に100万円の預金があるとしましょう。そのうち90万円が他の人に貸し出されると、借り手はその資金を使い、他の銀行に再び預金します。このプロセスが何度も繰り返されることで、経済全体に流通するお金が増えていきます。つまり、現実に存在するお金以上に「信用」という形で新たな資金が創造されるのです。
信用創造とインフレの関係
信用創造によって経済全体のマネー供給量が増えると、消費者や企業が利用できるお金が増え、需要が拡大します。しかし、供給がそれに追いつかなければ、商品やサービスの価格が上昇し、インフレが発生します。特に低金利政策が続くと、信用創造が加速しやすくなり、インフレのリスクが高まるのです。
逆に、信用創造が抑制されると、マネー供給が減少し、需要も落ち込むため、デフレが進行する可能性もあります。このため、中央銀行は信用創造を適切に管理することで、インフレとデフレのバランスを保つことが求められます。
バブル景気と信用創造
信用創造が過剰に行われると、バブル景気が発生します。例えば、日本の1980年代後半のバブル経済や、2000年代初頭のアメリカの住宅バブルが典型的な例です。このようなバブルは、以下のプロセスで膨らんでいきます。
- 金融緩和と低金利環境: 中央銀行が金利を低く設定すると、借り手が資産(不動産や株式など)を購入しやすくなり、その価格が上昇します。
- 銀行の貸出拡大: 資産価格の上昇を背景に、銀行はさらに多くの融資を行い、信用創造が加速します。
- 投機的行動の加速: 資産価格が上昇するという期待が強まると、投資家はさらに資産を購入し、価格はさらに急騰します。
この連鎖により、資産価格が実体経済をはるかに超えて上昇し、バブルが膨らんでいきます。
バブル崩壊と信用収縮
しかし、バブルはやがて崩壊します。この景気は物の価格が上がるという事に支えられています。「バブル」と言うのは実態が伴っていないという事です。地価はそれが生み出す以上の価格となり、やがて、限界に達します。資産価格の急落が始まると、銀行は貸し出しを引き締め、信用収縮が進みます。これにより、マネー供給が減少し、景気後退やデフレが発生するリスクが高まります。日本のバブル崩壊後の「失われた10年」は、信用収縮が経済に深刻な影響を与えた典型的な例です。その後も不況は30年以上続いています。
信用創造とハイパーインフレ
信用創造が行き過ぎると、ハイパーインフレを引き起こす危険もあります。これは、政府や銀行が過剰に紙幣を発行し、無秩序な貸し出しが進むことで、通貨の価値が急速に失われる現象です。過去には、ドイツのヴァイマル共和国やジンバブエでこのような事例が見られました。通貨の信頼が失われると、物価が急激に上昇し、生活必需品の確保さえ困難になるケースもあります。
まとめ
信用創造は経済成長を促進する一方で、過剰なマネー供給や貸出拡大は、バブルやハイパーインフレなどのリスクを引き起こします。そのため、中央銀行は金融政策を通じて、このプロセスを制御し、健全な経済成長を維持することが求められます。
信用創造の仕組みを理解することで、私たちはインフレやバブル景気の背後にあるメカニズムをより深く理解することができます。経済の安定には、適度な信用創造と慎重な金融政策が不可欠です。
バブル景気では、銀行が土地などの投資資金を積極的に貸し出しました。貸し出しとはいえ、実際には借主Aの銀行口座に金額が記帳されるだけです。Aがそのお金で土地を購入すると、不動産会社の口座残高が増え、Aの口座からは同額が引き落とされます。同じ銀行内であれば、実際の金銭の移動はありません。購入した土地は銀行が担保とします。バブル期までは地価が年々上昇していたため、担保額に余裕が生まれ、その差額を利用して銀行がさらに融資を行いました。このサイクルが繰り返され、土地不足により地価や株価の上昇が加速し、バブル景気を生み出しました。崩壊し、多くの企業が倒産し、多くの個人が自己破産したり、担保の土地や株式をなくしました。日本人は投資に対して恐怖するようになりました。